オステオパシーを学ぶことに関心をもっていただいて、ありがとうございます。この記事では、日本でオステオパシーを学ぶ上で、現在どんな方法があるのか、日本および世界のオステオパシー業界を20年以上見てきた上で、できるだけ客観的なところをお伝えしようと思います。結論としては、オステオパシーを学ぶには、セミナーで学ぶ方法と学校への入学の2つがあり、テクニックを効率的に学びたければセミナーが、基礎からしっかりとオステオパシー医学を学ぶには、しっかりしたカリキュラムの専門的な学校への入学がオススメです。
オステオパシー団体では様々なセミナーが提供されていますが、多くのセミナーは国家医療資格保有者向けでテクニックが中心の内容となっています。テクニック自体はすぐに臨床で使えるものも多いのですが、訓練と経験を必要とするものも多くあります。
テクニックは多岐にわたり、1つのテクニックの時間数は30〜60時間くらいで、国際セミナーなら3〜5日、月1のセミナーであれば半年〜1年ほどになります。医学が進むにつれて、オステオパシーの技術も洗練されたものが増えてきており、それがいくつかシリーズ化されているものもあります。
セミナーでテクニックを習得することはもちろんですが、重要なことは、オステオパシーがテクニックだけで構成されているわけではないことを理解しながら学ぶことです。オステオパシーは対症療法ではなく根治療法で原因をみつけてそこにアプローチする医学です。
セミナーではそのトピック中心に学習が進められるため、オステオパシー理論や考え方はトピックに関連したものになり、対症療法的に偏ってしまいがちですが、どのようなメカニズムで問題が起こったのか、その問題に合うメカニズムのテクニックは何か、身体全体とどう関わっているかを考える必要があります。全体像の捉え方のプロセスが重要で、テクニックを適所に適したタイミングに使うことによって、大きな結果を出すことができます。
それができるまでには時間がかかりますが、オステオパシーのテクニックを使っているからといって、残念ながらそれが”オステオパシー”とは言えない理由はそこにあります。
次に学校で学ぶ方法ですが、オステオパシーの専門学校には様々なものがあり、オステオパシーを学ぶのに必要なカリキュラムが網羅されていることが重要です。セミナー教育に比べ、短期間で全体的に勉強できることも長所です。
オステオパスとなるにはどのような知識とスキルが必要なのでしょうか?
- 基礎医学知識
- オステオパシーの哲学に対する理解
- 基本となるテクニック
- オステオパシーの原理に基づいた評価と臨床のスキル
- 開業・経営の基礎知識
基礎医学知識はオステオパシーの理論の理解や応用をしていく思考プロセスを組み立てるのに不可欠です。詳細を知っていれば知っているほど評価や施術の精度が高くなっていきます。
また、安全面においても基礎医学知識なしでは危険です。一般的なオステオパシーセミナーが有資格者のみという理由もここにあります。
オステオパシーの哲学
問題の本質・原因を探り出し、解決方法を導き出すその思考プロセスにあります。これは理解しているだけではなく、臨床において応用する訓練を必要とします。
原因は手技で解決できることもありますし、他の医療と協力しなければならないこともあります。例えば甲状腺機能不全であれば甲状腺ホルモンが不足しますので、薬で補う必要がありますが、現代医学的なアプローチも原因究明した結果であれば原因に対する適切なオステオパシー的なアプローチと言えます。
基本となるテクニック
多くのテクニックがある中で、基礎的な触診技術や身体の扱いを段階的に学ぶことで、多くの応用テクニックに発展させていけるテクニックがいくつかあります。学校により特色がありますが、卒業後にすぐに社会に貢献でき、将来実力を伸ばしていける技術が構成されているか重要になります。
これからセミナーを受講しようと思われている方にも、何から学んだらよいか、ジャパン カレッジ オブ オステオパシー(JCO)のカリキュラムをご参考にしていただければと思います。
オステオパシーの原理に基づいた評価と臨床のスキル
基礎医学や専門科目で培った知識と技術に基づいて問題の本質を見極めていく思考プロセスのスキルと、効率よく適用していき、クライアントとのコミュニケーションをとりながら様々な症例に触れ、考察や技術を深めていき、オステオパスとしての素養と倫理観を養っていきます。
Osteopathic International Alliance (OIA)というオステオパシーの世界団体があり、世界保健機関(WHO)と協力して世界中で高い水準のオステオパシーを受けられるようにガイドラインを作成しております。その一環として、ベンチマークの目安が示されました。(Benchmarks for Training in Osteopathy)
OIAのミーティングでのコンセンサスで、1000時間以上の臨床経験が推奨されており、日本でその水準をクリアしているのはJCOのみです。
開業・経営の基礎知識
「オステオパス」として勤務できる施設はまだ少ないのが現状で、「オステオパス」として活躍するには独立開業とすることが実際には多くなります。最短距離で経営を軌道に乗せるためには、実際施術院を経営され、成功されている先生方によるサポートがあるかも重要です。
海外は国や学校によって長所短所あるものの、素晴らしいカリキュラムが組まれており、留学して学ぶということも可能ですが、高い語学力と、学費と滞在費などの大きな費用が必要となります。期間としては欧州・オセアニアで4〜5年の学士もしくは修士課程が標準となっています。
米国では4年制大学を卒業し、Medical College Admission Testに合格した上で出願し、5年と研修医を数年が標準となっています。
まとめ
オステオパシーを学ぶ方法は主に2つ。医療系資格保有者がテクニックを効率的に学びたいのであれば、各団体で提供しているセミナーの受講が一番の近道です。オステオパシーの基礎理論や考え方からしっかりとオステオパシー医学を学び、習得することに興味があれば、3年制以上のしっかりとしたカリキュラムのある学校に入学して学ぶのがオススメです。
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執筆者 : 平塚 佳輝, BSc(Hons)Ost., MRO(J) JCO学長
プロフィール
1999年 British School of Osteopathy卒業(現University College of Osteopathy)し、1年間の臨床経験を積んだ後、帰国。2001年よりJCO講師、2009年JCO学長就任。日本オステオパシー連合国際部長。立川オステオパシーセンター副院長。
Benchmarks for Training in Osteopathy
世界保健機関 World Health Organization
Osteopathic International Alliance