この記事ではオステオパシーの資格について、世界と日本の現状について掘り下げていきたいと思います。

目次

1,オステオパシーの資格の種類 国家資格と民間資格
2,D.O.って? 日本での資格は?
3,オステオパシーは他の国でも使えるの?
4,オステオパシーの資格の取り方
5,資格を取るまでの期間と費用(米国/諸外国/日本/留学)
6,オステオパシーを学ぶにあたり(難易度通信教育/働きながら(外国/日本)
7,オステオパシーの資格を取ってから

1,オステオパシーの資格の種類 国家資格と民間資格

オステオパシーは世界的にその理論・安全性・効果が認められ、国家資格として認める国が増えてきつつあります。
まだ国家資格としての発展途上である国も多く、そういった国では民間資格として各団体が知識・技術を認めたオステオパスを認定する形を取っています。その民間資格の基準もまちまちで、国家資格を目指して高水準の教育活動している所や、部分的に技術を教えている所などがあり、施術を受ける側、勉強する側にとっては見極めが難しいというのが現状です。

Osteopathic International Alliance (OIA オステオパシー国際同盟 https://oialliance.org) という国際団体があり、世界中どこでも高レベルのオステオパシーを受けられるよう、世界保健機構(WHO)と協力して活動をしており、目標を同じくする団体が会員となっております。
国家資格となっているメンバーはFullメンバー、国家資格に向けて活動し、OIAの条件を満たしている団体はAssociateメンバー、目標をOIAと同じくし、学校など条件を満たさいない団体はPartnerメンバーと段階分けがされています。
日本では、日本オステオパシー連合(JOF)がAssociateメンバーとなっております。

国家資格はそれぞれの国が基準を設けているため、多少の違いはありますが、大きく分けて2種類あります。医師・Medical Doctorと同等の診察・治療の制限のない、投薬・手術までできる資格と、手技のみを行うことが許されている資格です。
前者は米国・イスラエルが、後者はヨーロッパ・オセアニアの国々です。

日本はオステオパシーが国家資格として認められていないため、民間資格となります。
学校の修了認定を出しているところや、団体で試験を行い認定を出しているところもあります。
1〜2週間のセミナーで認定を出してしまうところもあり、教育レベルの差は国家資格となっていない国では取り締まりができないので仕方のない部分でもあります。

2,D.O.って? 日本での資格は?

D.O.はオステオパスの資格の略になるのですが、元々は米国の”Doctor of Osteopathy”の略です。(米国では“オステオパス”とは呼ばず、“オステオパシー医師 (Osteopathic Physician)”と呼ぶことが多いです。)しかし、大学の学士号や修士号で使われる、”Degree of Osteopathy”や、特にはっきりとした基準のない、”Diploma of Osteopathy”というものがあります。

これは誤解を招きかねないということで、英国では”D.O.”という呼称をやめ、”オステオパス”に統一されています。英国で”オステオパス”と名乗るには、試験を受け、General Osteopathic Councilに登録しなければ違法となります。余談ですが、歯科医師(Doctor of Orthodontics)もD.O.になるのでその混乱を避けたかった意図もあります。

米国でオステオパシー医師になるには、後述しますが、大変な道のりで、その誇りを持ち“D.O.”を名乗られております。

オステオパシー大学がなく、国家資格のない国は、”Diploma”となりますが、やはり基準が曖昧になるため、別の呼称を用いている団体もあります。よく使われるのが”MRO”(Member of Registered Osteopaths、Member of Register of Osteopathyなどの略)にその国の頭文字を付けた呼称です。起源は国家資格となる前の英国での“MRO”です。フランスにも他との差別化を図るため、MRO(F)というものがありました。ただ一部の団体の資格であったので、国家資格になった際に使われなくなりました。

日本では日本オステオパシー連合がMember of the Register of Osteopaths Japan – MRO(J)という認定基準を設けており、筆記試験・実技試験を通った上で認定されます。取り方については後述いたします。(MRO(J)については、日本オステオパシー連合Webサイトに詳しい内容がありますので、そちらをご覧ください。https://osteopathy.gr.jp/mro/)

3,オステオパシーは他の国でも使えるの?

国家資格は基本的にその国の国家資格を取る必要があり、別の国で国家資格を取っても施術をする国で試験を受けて国家資格を取る必要があります。例外としては、オーストラリアで取得した資格がニュージーランドで認められているところです。
米国のオステオパシー医師は自国での投薬・手術までの医療行為が認められますが、日本で医師として活動するためには、日本の医師国家試験を受け、合格する必要があります。
国家資格のない国で勉強し、国家資格のある国でオステオパスとして働くには、その国の条件を満たす必要があります。

法のグレーエリアも存在し、”オステオパス”と名乗らなければオステオパシー施術が可能な国もあります。
しかしながら、その国の他の理学療法士などの手技医療の国家資格などの何らかの資格を必要とする場合もあり、厳密には当該国の厚生省の基準に従う形となります。
配偶者などがその国の国民でない場合などは労働ビザも必要ですので、かなりハードルは高いと言わざるを得ません。

セミナーなどの参加資格についてはまちまちですが、セミナーを開催している団体の基準に基づいて決められますので一概には言えません。医学知識やオステオパシーの知識・技術がある前提で国外のセミナーは組まれており、基礎医学知識が無ければ理解ができなかったり、危険を伴ったりします。厳しい基準を設けているセミナーでは、そういった教育をしている団体の登録会員であることが受講資格となりますが、一定の教育を受けたと認められれば参加が可能な場合もあります。

4,オステオパシーの資格の取り方

国家資格のある国では、国の認証を受けた大学で勉強をして、試験を受けて取得します。卒業試験が国家試験となっており、通常、国の機関から試験官が派遣されて第三者による試験が行われます。
欧州ではその国で国家資格にはなっていなくても、大学が存在する国があり、大学で学位を取ることが重要です。オステオパシーの学位は、欧州ではその勉強量から修士号に匹敵すると考えられており、現在では修士号がスタンダードになってきております。加えて欧州では、大学 → 大学院開設 → 国家資格の立法、という筋道ができているからです。
欧州は英国のシステムをコピーした形で発展しているため、EUで教育内容や法律がほぼ共有されているのも発展スピードの速さに現れていると思われます。

日本では、JOFが発行しているMRO(J)は、受験資格がまず必要になります。
国家医療資格のある方は、JOF構成団体の基準を満たし、会長より推薦されて受験可能となります。
そうでない場合は、JOF認定校であるJCOを卒業することで受験資格が与えられます。
試験は筆記と実技で行われ、国際基準に見合うよう設定されております。

5,資格を取るまでの期間と費用(米国/諸外国/日本/留学)

米国では入学資格が大学卒業に加え、Medical College Admission Test (MCAT)という試験に合格しなければ受験できません。
更に5年間のオステオパシー医科大学での勉強の上に、研修医として数年の期間がかかります。
費用的にもオステオパシー医科大学だけで7000万前後かかります($1=140円換算)
これはオステオパシーに加え、通常の医師と同じ、投薬・手術まで含めた医学を学習するためです。

欧州では、英国の1例ですと、4年間の全日制のコースで少なくとも約590万円(£1=160円換算)となります。

日本では医療資格なしで基礎医学から学習する場合は、ジャパン カレッジ オブ オステオパシー(JCO)の例ですと、海外研修も含め、学費のみで約450〜460万円位のコストとなります。

そこに医学書や4〜5年分の生活費が加わり、留学となると日本より割高な生活費がかかります。

6,オステオパシーを学ぶにあたり(難易度/通信教育/働きながら(外国/日本)

オステオパシーは医学知識を利用して問題を探求していく思考プロセスが重要で、その訓練が必要な医学です。思考プロセスを成立させるための知識と基礎技術の習得も大変ですが、その応用である臨床における実践はOIAも重要なものと位置づけており、最低でも1,000時間は必要と言われております。欧州では1,500〜2,000時間が設定されております。
臨床実習では実際のクライアントの施術を行いますので、常に試験されているような感覚です。私の卒業した大学の構内に入ると、当時の感覚を体が覚えていて、無意識に緊張してしまうくらいです。非常にハードなものになりますが、情報の扱い方がわかるようになり、原因究明ができるようになってくると、オステオパシーの素晴らしさが理解できてくると思います。

米国・欧州では全日制の教育が通常ですが、学校によっては部分的にパートタイムにできる場合もあります。勉強する国の言語が母国語でない場合は、働きながらは非常に難易度が高いです。
欧州は学位の取得も必要なので、修士論文が必須となります。

日本では、1,000時間以上の臨床実習を含むカリキュラムが組まれているのはJCOのみで、2021年度より働きながら学べるよう、夜間・週末に講義を集中し、座学はオンラインで受講できるようにカリキュラムが改定され、3年間の全日制から4年間のパートタイムとなりました。

7,オステオパシーの資格を取ってから

医学はご存知の通り、日進月歩で変わっていきますので、情報のアップデートは必須となる職業です。そのため、各国で資格を更新するためのノルマが設定されています。

米国:10年毎に国家試験を受けて合格する必要がある
英国:年30時間のセミナー受講、グループ学習など(詳細の提出と内容の認定が必要)
日本(JOFの場合):年40時間のJOFの認可したセミナ―・講義の受講がMRO(J)の維持に必要

長くなりましたが、オステオパシーの資格についての概要をお話しさせていただきました。
少しでもオステオパシーを学びたいと考えられている方の助力となればと思います。

平塚 佳輝, BSc(Hons)Ost., MRO(J)

ジャパン カレッジ オブ オステオパシー学長
日本オステオパシー連合 国際部長
日本オステオパシー学会 会員
ジャパン カレッジ オブ オステオパシー講師(神経筋骨格科学 神経学)
オステオパシック・スポーツ・ケア・ジャパン 副会長
American Academy of Osteopathy 国際会員
DO-Touch.NET International Members
Jones Strain/Counterstain Academy Japan 会員
頭蓋ベーシック40時間テーブルトレーナー