オステオパシーでは、どういったスポーツ傷害に、どのようにアプローチしているのでしょうか? ひとつずつ、用語をかみ砕きながらお話ししていきます。

目次

(1)スポーツ傷害とは?
(2)スポーツ傷害にオステオパシーは使われている?
(3)オステオパシーとは?
(4)スポーツ領域におけるオステオパシー
(5)代表的なスポーツ傷害とオステオパシーによる治療
(6)オステオパシーの適応外のものや禁忌
(7)スポーツパフォーマンス向上のためのオステオパシー
(8)スポーツ領域に強いオステオパシー院はどうやって探せる?
(9)スポーツ領域のオステオパシーを学べるところは?
(10)痛み止めしか処方されない

(1)スポーツ傷害とは?

そもそもスポーツ傷害と障害、なにが違うの?

スポーツ傷害へオステオパシーは使われていますが、そもそもスポーツ傷害とはなんでしょうか。
スポーツ傷害は大きく二つに分けることができます。
一つは「スポーツ外傷」、もう一つは「スポーツ障害」です。

スポーツ外傷とは、スポーツ中にエピソードがはっきりしている受傷です。
例えば手を付いた時に手首を捻ってしまったり、他のプレーヤーとのコンタクトで転倒して骨折してしまったり、ボールが身体に強く当たることで、筋線維や血管が傷ついてしまうといったものです。
偶然かつ突発的なもので、いつどこで受傷したのかが分かりやすいのが特徴です。

スポーツ障害は、同じ動きを繰り返し行うことにより、一定の部位に負荷がかかり続けることによって、組織にダメージを与え続け、それがやがて怪我となるものです。
スポーツを行えば大なり小なり、組織はダメージを受けますが、なんらかの理由で治癒力が追いつかなくなることによって起こります。
このスポーツ障害は、別名オーバーユースシンドローム(使い過ぎ症候群)とも呼ばれ、自分では気が付かないような、動きのクセが原因になることもあります。

前述したように、このスポーツ外傷とスポーツ障害を合わせたものを「スポーツ傷害」と呼びます。

(2)スポーツ傷害にオステオパシーは使われている?

スポーツ傷害の「外傷」と「障害」。
オステオパシーはそのどちらに使われているでしょうか?

【スポーツ外傷に対するオステオパシー】

まずスポーツ外傷でどう使われているかを考えてみましょう。
例えばスポーツ中に行ったジャンプでの着地で、足首を捻挫してしまった場合、これはスポーツ外傷になります。
オステオパシーに限らず、外傷を負った場合まず応急処置を行います。スポーツ外傷での応急手当の代表的なものの一つにRICE処置があります。
このRICEとは、

Rest(安静)
Ice(冷却)
Compression(圧迫)
Elevation(挙上)

の頭文字です。

また、2012年頃からPOLICE処置というものも提唱され始めてきました。
これは、

Protect(保護)
Optimal Loading(最適な運動)
Ice(冷却)
Compression(圧迫)
Elevation(拳上)

の頭文字からなります。
RICEでのRest(安静)の期間が長いと、筋の萎縮や結合組織の変異が生じてしまうことが分かってきました。
そこで早い段階でOptimal Loading(最適な運動)を行い、血液の循環を良くし、筋の萎縮や結合組織の変異を防ぐという面がRICEとの大きな違いです。

さて、足首の捻挫に戻りましょう。
この場合、受傷している組織は靭帯、特に前距腓靭帯であることが多いとされています。また、捻挫の衝撃で関節があるべき場所に位置していないこともあります。
そのため筋膜が捻じれ、受傷した局所の炎症による炎症物質が流れず溜まり、腫れたり浮腫んできたりします。

これは自然のギプスになっているともいえる状態ですが、現代社会では必ずしも必要なものではなく、体液の循環効率を上げた方が治癒のプロセスはスムーズに行われます。
オステオパシーは変異した関節や筋膜の状態を正常に近づけ、体液の循環を上げ、炎症物質を流し、より早い浮腫と疼痛の改善、また関節可動域の回復を促します。

スポーツ外傷ではまず応急処置を行い、受傷した局所にオステオパシーのアプローチをすることができる状態なら、それを行うことにより、このように治癒力の向上を促すことができます。

さらにオステオパシーは「なぜ足首を捻挫してしまったか」にもスポットを当てます。
炎症や痛みは靭帯の損傷が起こしているとしても、「なぜ足首を捻挫してしまったか」に必ず関係するものではなく、他の原因の可能性も考えられます。
これは身体全域で起こっているストレスがある局所に集中してしまい、その局所が被害を受けていることがあるからです。

例えばですが、腰椎5番や腓骨や大腿二頭筋、後脛骨筋の機能不全が原因のこともあるでしょう。
その機能不全が残っているという事は、スポーツ外傷の再受傷のリスクを意味します。
身体を一つのユニットとして考えるオステオパシーは、ここにもアプローチすることができます。

オステオパシーのメリットはさらにもう一つあります。
前述の通り、近年ではOptimal Loading(最適な運動)が大切なファクターと考えられています。
オステオパシーによって受傷した局所のコンディションを良くし、関節可動域を回復させ、身体の全域的な問題で負荷が局所的に集中してしまうことを取り除くことは、Optimal Loading(最適な運動)を文字通り「最適に」行っていくことに繋がります。

オステオパシーはスポーツ外傷に関して、こうやって局所的、全域的なアプローチで治癒の速度を上げ、再受傷のリスクを減らし、より効果的なOptimal Loading(最適な運動)を行う状態をつくる役割を担っています。

【スポーツ障害に対するオステオパシー】

次に、オステオパシーはスポーツ障害には、どう使われているのでしょうか?
スポーツ障害とは、同じ動きの繰り返しによって慢性的な怪我となるものでした。
キーワードは「代償動作」と「治癒力」です。

代償動作とは、上手に動かせない箇所があるときに、他の部分が補う動作のことです。
例えば手を高く上げたくても、肩が何らかの理由でロックしてしまい高く挙げられない時、腰を捻ってあげようとするケースがあります。
これは肩の動きを腰が代償して動作している状態で、この動きは腰本来の機能ではないため、腰に非常に強いストレスがかかります。

この肩と腰の代償動作は、スポーツで言えばテニスのサーブやバレーボールのブロックを始め、様々な動作での腰痛=スポーツ障害の因子になります。
オステオパシーは身体を一つのユニットと捉え、原因を探しアプローチする学問ですので、腰が痛いとしても肩へのアプローチも行うのにはこういう理由があります。

オステオパシーによって身体のバランスが取れ状態が良くなると過度のストレスがかからなくなっていきます。
そうなると、私たちに元々備わっている治癒力が滞ることなく起こり、スポーツ障害の改善や、スポーツ障害につながるリスクを減らします。
さらに、身体全体が本来の機能を取り戻すことで、良い意味で、より多く練習ができる状態になることも、積極的にスポーツを行っている方たちにとってのアドバンテージになります。

こうやってオステオパシーはスポーツ障害とスポーツ外傷のどちらにも使われていて、スポーツ障害では症状の改善と原因の除去に、スポーツ外傷では早い治癒と再発の防止に使われています。

(3)オステオパシーとは?

オステオパシーはアメリカ発祥の医学です!

身体が本来持っている機能が発揮できるように、身体を調整することにより、自然治癒力を活性化させて健康に導くという医学で、1874年にA.T.スティル医師により生まれました。

今日では多くの国で医療系国家資格として採用されており、発祥のアメリカでは、医師が投薬や外科手術と並行して行う徒手医学として医科大学で学びます。
イギリスなどでは、徒手医学のみを行う国家資格となっているなど、国ごとの違いはありますが、国際機関もありオステオパシーの品質が守られています。

このオステオパシーが、オステオパシーたる所以には、3つの哲学があります。
それは、
「身体はひとつのユニットである」
「人間は自己治癒力を持つ」
「構造と機能は相互に関連する」
というものです。

オステオパシーの特長はこの3つの哲学、つまり痛みや障害の起こっている部分だけをみるのではなく、身体を詳細にみることにより、問題の根本的原因を探り、解決をしていくところにあります。
そしてこの身体とはBody Mind Spiritの三位一体であるとも考えます。

こうして身体全域を把握し、不調の解決の糸口を掴むためにも、解決するためのアプローチのためにも、解剖学、生理学、病理学、心理学など様々な知識をオステオパシーの哲学に合わせ使います。

オステオパシーは現在でも各機関や医学部で研究と発展がされている学問でもあります。

(4)スポーツ領域におけるオステオパシー

スポーツではどういう立ち位置なの?

こういった歴史や特長を持つオステオパシーは、世界的にもスポーツ領域で使われています。
多くのスポーツでも著名な選手やパフォーマーが個人的にケアとして使っているほか、スポーツのチーム医療としてCOPSと呼ばれるものがあります。

これは、
C Chiropractic(カイロプラクティック)
O Osteopathy(オステオパシー)
P Physical therapy(理学療法士)
S Sports massage(スポーツマッサージ)
のイニシャルを取ったものです。

COPSは2016リオオリンピックなど世界大会で採用されているものです。
2020日本オリンピックでも、このCOPSが採用されるよう私どもも尽力しましたが、日本の法的な問題で採用を見送られてしまったため、日本での知名度はあまり高くないかもしれません。

世界的には、脊柱や神経系のカイロプラクティックに、局所に捉われないオステオパシー、物理療法とリハビリテーションの理学療法、疲労回復のスポーツマッサージと、それぞれの特徴で各分野の治療家たちが力を合わせて、クライアントの助けになるように活動がされています。

また2016リオオリンピックではJCO(ジャパン・カレッジ・オブ・オステオパシー)学長である平塚佳輝氏と、JCO講師である佐藤鉄也氏が、COPSの一員としてポリクリニックに参加し、多くの選手のケアに携わりました。

(5)代表的なスポーツ傷害とオステオパシーによる治療

実際にスポーツ傷害へどうやってオステオパシーは使われているの?

どのようにオステオパシーはスポーツ傷害に使われているかは、“(2)スポーツ傷害にオステオパシーは使われている?”にてお話をしました。
基本的な考え方とプロセスはこれと変わりはありません。

ここでは、オステオパシーではどのように考え、治療しているかについて、例をいくつかお話し致します。
ただ、同じ名前の怪我だとしても、内実には様々な原因や機序がありますので、詳しく書くと膨大な質と量になってしまいます。ここではほんの一例を簡潔にご紹介させていただきます。

足底腱膜炎
足の裏にある腱の膜が、何らかの繰り返しのストレスにより、傷つき炎症している状態です。
多くは足の裏のアーチの不全が原因とされます。
オステオパシーでは、なぜ足の裏のアーチが不全になっているかを考え、ここでは原因の一つである姿勢を紹介します。
足底は姿勢=重心の状態により圧のかかる領域が変わります。
この圧が適正でなければ、まっすぐ立ったり歩いたりできないのですが、足の裏がその代償を行ってくれる場合があり、その「悲鳴」が足底腱膜炎として現れていることがあります。その時は、足の裏が余計に頑張らなくていい状態にするようアプローチします。

内反捻挫
いわゆる足首の捻挫です。
足部の距骨という骨が後外側に変異し、腓骨を下方へ引っ張ります。
さらに踵の骨が内側へ倒れ、脛骨を外旋、大腿骨を内旋させ骨盤(寛骨)を後方へ変異させます。
腓骨が下方に下がることにより大腿二頭筋長頭も引っ張られ、寛骨を後方へさらに引っ張ります。
受傷後どのくらいの期間が経っているか、どのような症状かにもよりますが、上述の箇所の動きの協調性が出るようにアプローチをします。

鵞足炎
鵞足は膝の内側にある、縫工筋、薄筋、半腱様筋が付く箇所のことです。
どの筋肉によって痛みを出しているかもありますが、ここでは半腱様筋について考えましょう。
半腱様筋はハムストリングスの内側にあります。外側のハムストリングスとのバランスが崩れ、内側ハムストリングスのほうが強くなると、脛骨を内側に回転させます。
これにより半腱様筋と内側側副靭帯に負担がかかり炎症したり、半腱様筋が硬縮して痛みを出したりすることがあります。
アプローチは、内外側のハムストリングスのバランスを取ることのほか、前述の足底腱膜炎や、内反捻挫の兆候や、股関節の状態なども踏まえて選択していきます。

脊柱管狭窄症
背骨の中は空洞になっており、そこに神経が通っています。
何らかの理由で背骨のコンディションが悪くなり、その空洞を狭めてしまい神経を圧迫して、痺れなどの症状を起こしているのが脊柱管狭窄症です。
圧迫してしまっている原因の一つに「極度の反り腰」があり、原因の一端として、脊柱起立筋や大腿直筋、広背筋、大腰筋の後部、または腰椎の椎間関節や、頸部や、距腿関節の状態などが考えられます。
これらは、スポーツのパワー発揮において大きな役割を担うものでもあります。
オステオパシーではこれらを鑑別してアプローチをしていきます。
場合によっては、医療機関の受診を勧める事もありますが、それはオステオパシーが医学であるからこそ、できることでもあります。

(6)オステオパシーの適応外のものや禁忌

オステオパシーってどんなものにでも使えるの?

スポーツ傷害の中でオステオパシーの適応外のものはあります。それは、急性のものや重度のものです。
例えば骨折や多量の出血といった外傷や、意識の消失や激しい頭痛といったものです。

骨折ならどのような骨折なのかをCTなどで確認し処置する必要があり、多量の出血の場合は止血や輸血の必要があります。
意識の消失や激しい頭痛は脳出血や脳へのダメージの可能性があり、その対応は専門の医療機関でしなければなりません。

他には、脱水症や熱中症、低血糖症の場合もオステオパシーの適応外で、それに合った処置を行う必要があります。

急性や重度のものでも、その後に安定してきたらオステオパシーを受けることができます。
大きな怪我をして治療中の段階の方や、治療は終わったけれど、違和感の残られる方がオステオパシーを受けに来られることは多くあります。

また、急性期でも捻挫や突き指やむち打ち、ギックリ腰といったものはオステオパシーを受けることができます。
目立った外傷はないけれど、痛みや違和感が発生しているようものでも、受けることは可能ですが、医療機関を受診して大きな疾病がないことを確認されてから、お越しいただくことを勧めています。
状態によってはこちらから医療機関の受診を勧めることもあります。

(7)スポーツパフォーマンス向上のためのオステオパシー

オステオパシーがスポーツパフォーマンスの向上にもつながるって、どういうこと?

身体は骨格筋、いわゆる筋肉を動かすことで様々な身体動作を行っています。
この身体動作を一定のルールやレギュレーションの中で行い、楽しんだり競い合ったりするものがスポーツです。
例えば脚だけでボールを扱うサッカー、片手に持ったラケットを使ってボールを打つテニスや卓球、どれだけ早く目的地に胴体を動かすかを競う陸上競技や水泳など、スポーツはそのルールやレギュレーションによってさまざまな種類があります。

スポーツパフォーマンスを向上させる、と聞くと何が連想されるでしょうか。多くの場合、連想されるのは筋肉の強さ=筋出力ではないでしょうか。もちろんスポーツパフォーマンス向上にとって筋出力は非常に大切なものの一つです。
しかし昨今のスポーツは年々レベルが高くなってきており、緻密かつ精密な動きが必須になってきています。これは単純な筋出力の向上がスポーツパフォーマンスに必ずしも直結するとは限らない、ということの現れです。それはなぜでしょうか?

このことを身近にあるもの、車で例えてみましょう。

まず筋出力はエンジンの強さといえます。
エンジンがどれだけ強くても、車体フレームが弱かったり歪んでいたりすると、エンジンの出力に車体は耐えられないため、大きな力を出すことができません。これは人間の身体では体幹にあたります。
車は大小数万個のパーツで成り立っていますが、どこかのボルトの締めが甘かったり、歯車が上手く噛み合っていなかったりすると、効率よくパワーを伝えることができません。これも人間ですとインナーマッスルや関節や骨、筋膜などになります。

エンジンのパワーを最終的に伝えたい場所は、車の場合はタイヤであり、さらにいえばタイヤと接する地面です。エンジンからのパワーを適切に取り出し、スムーズに地面に伝えることができて、初めてそのパワーは意味を成します。
そして、それをコントロールするための、ハンドルやブレーキが適正に働くためには、これもまた車体フレームや、多くのパーツが適正である必要があります。
もし右には軽いのに左に重い、というような左右差のあるハンドルだとしたら、普通の運転ももちろん、繊細で安全な運転は難しいことなど、想像しやすいのではないでしょうか。

人の身体の、全体と部分の両方を、細かく調和が取れるように調整していくオステオパシーは、「フレーム=体幹の歪み」や、「パーツ=細かな部位の不良」を取り除くことに長けています。
これはロスを生んでしまっているパワーの、伝達と効率を改善させます。また狂ってしまっている神経系があれば、その機能の改善にもつながります。

多くのスポーツ愛好家や競技者は、各々のスポーツの特徴によって身体にダメージを負っていて、それが歪みなどにつながり、パワーの伝達や効率のロスにつながっていっていることは、珍しくありません。

もしすでに、ロスが大きくなってしまっている状態の人であれば、トレーニングをするわけでなく、オステオパシーの施術を受けるだけでも、身体はその機能を取り戻し始め、パフォーマンスが大きく向上するケースもあります。
ロスの小さな人も、自分の気が付かないような細かなロスを修正することによって、緻密で精密な動作がより行いやすくなる、動きやすくなることも多くあります。

特異的、非特異的、どちらのトレーニングでも、この身体がロックされていない状態でトレーニングが行えるということは、力が逃がさずにロス少なくパワーを伝えられる、神経系的動作の習得につながる、ということを意味し、これは筋出力発揮が最適化されつつ成長できることにつながっていきます。

こういった内容に沿ったオステオパシーを行うことが、スポーツパフォーマンス向上のためのオステオパシーといえます。

もう一つ、このパワーの伝達と効率以外にメリットがあります。
それは「適正な動作」と「治癒力」です。

(2)スポーツ傷害にオステオパシーは使われている?”で代償動作についてお話ししましたが、身体の歪みや動作不良は、この代償動作につながり、スポーツ障害の温床となります。

これら歪みや動作不良、代償動作が減り適正な動作で動けるようになっていけば、スポーツ障害のリスクを減らし、練習の質と量を上げることができます。
練習量を上げるといっても、気合や根性で痛みに耐えることによって、無理に練習量を上げることと、自然と上げることができるようになることに、どれほどの違いがあるかはお分かりいただけると思います。

そして治癒力です。
オステオパシーは治癒力を取り戻し、向上させるものです。

この治癒力が滞らないようにしておくことは、ハードなトレーニングや試合を行った後でも、肉体的精神的な疲労が素早く消失し、すぐにフレッシュな状態で次へと臨めるともいえます。

こういった側面から練習の質と量を上げることもスポーツパフォーマンス向上の大きなメリットとなります。

(8)スポーツ領域に強いオステオパシー院はどうやって探せる?

ポイントは「オステオパシー施術者=オステオパスとしての経歴があるか」と「スポーツトレーナーとしての経歴があるか」です!

【オステオパスとしての基準】

日本のどの国家資格にも修得には時間と努力が必要なように、各国で国家資格となっているオステオパシーも修得には時間と努力が必要です。
日本でオステオパシーは国家資格ではないので、どなたでも「オステオパシーを行っている」と名乗ることはできます。

多くの国で採用されているオステオパシーですが、世界の全ての国で国家資格とはなっていなく、日本も国家資格ではありません。
そのためMROという資格があります。MROはヨーロッパやアジア・オセアニアで使用されている認定オステオパスの登録商標です。

MROは「Member of Registered Osteopaths」のイニシャルです。最後にその国のイニシャルが付くので、日本の場合はJapanのJが付き「MRO(J)」というライセンスになります。
このMRO(J)はJOF(日本オステオパシー連合)が認定して発行しているので、日本で一定の水準をクリアしたオステオパスの証明の一つとして頂けるものです。

またOSCAJ(日本オステオパシースポーツケア協会)では、元スコットランド代表ラグビー選手でありイギリスのオステオパスであるDavid Millard氏の国際セミナーを始め、スポーツケアに特化したセミナーを開催しています。こういったセミナーの受講経験の有無も一つのポイントになるでしょう。

【スポーツトレーナーとしての基準】

そしてスポーツ領域に特に強いオステオパスを探すには、オステオパシーにプラスして、さらにスポーツ領域での実績や知識が必要になります。

実績は、実際に活動をしているかをホームページなどで調べたり、直接ダイレクトメールなどで尋ねたりする必要があるかもしれません。
知識という面では、スポーツ分野での資格の代表的なものを所持しているかを目安にすると良いでしょう。

代表的な例ですが、JSPO(日本スポーツ協会)のアスレティックトレーナーや、NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)のCSCSや、NASM(全米スポーツ医学アカデミー)のPESといった資格は、スポーツパフォーマンスやスポーツケアに特化している資格なので、MROと並行して所持しているとスポーツ領域に強いオステオパスと考えられます。

こういったオステオパスは、オステオパシー的なスポーツ傷害のアプローチと同時に、再発予防やスポーツパフォーマンスの向上に繋げた施術やアプローチを行ってくれるでしょう。

(9)スポーツ領域のオステオパシーを学べるところは?

フィットネス人口の増えてきた日本だからこそ!

日本のオステオパス育成機関であるJCOでは、優秀なオステオパスの育成のために、世界基準に準じる包括的なカリキュラムを有しています。
2020年からはスポーツ領域にも力を入れ、カリキュラム内にスポーツ領域のオステオパシーを追加しています。

昨今の日本では、フィットネス人口が増加していて、身近なものになってきています。
運動と健康の相関関係は、今後これまで以上に、一般的なものになっていくことも予想できます。
そうであるならば、スポーツ特有の傷害である、スポーツ傷害へのアプローチや、スポーツ特有の症状へのケア、適切な運動や栄養へのアドバイスは、これまで以上に、セラピストに必要になっていくスキルになっていくでしょう。

JCOではカリキュラムにスポーツ領域のオステオパシーが追加されただけでなく、前述のDavid Millard氏を始めとした、スポーツ領域のオステオパシーのセミナーも、今後開催されていくことが考えられます。

こういった知識は、スポーツ領域にオステオパシー的なアプローチが出来るようになると同時に、オステオパシー的な視点で考えられるスキルは、卒後に、もしなんらかのスポーツ分野や健康運動分野の勉強をしていく上でも、大きく役立つ基礎になるでしょう。

なぜならば、オステオパシーを学ぶ上では、解剖学や生理学といった、基礎医学が非常に重要になります。その深い理解は、NSCAやNASMといった基礎医学を重要視するスポーツ資格団体の有資格者との連携や、その資格の取得といったものにも活用できるからです。
さらにボディワークである、ロルフィングやフランクリンメソッドやPRIやピラティスなどは、作られた経緯にオステオパシーの影響があります。こういった有資格者との連携や、自分が学ぶ時も、オステオパシーの知識は大きな力になってくれます。

スポーツ領域のオステオパシーの取得はもちろん、卒後にあらゆる方向へ広げることのできる学びを得られるJCOは、スポーツ領域のオステオパシーを学べる場所といえます。

(10)痛み止めしか処方されない

臨床経験も含めて

私はオステオパスとしての治療家の活動と同時に、フィジカルトレーニングのトレーナーとしても活動しています。
この活動の中で、格闘技関係のクライアントとのセッションもあります。
格闘技は、試合はもちろん、日々の練習でも怪我、つまりスポーツ傷害(=おさらいですが、スポーツ外傷とスポーツ障害の総称です)を負いやすいものの一つです。

その臨床談になりますが、スポーツ外傷、例えば、関節技を決められてしまい、捻挫のような怪我をしてしまった時も、頭部を強打されて軽い脳震盪を起こしている時も、下顎を打ち抜かれて口が開かなくなってしまった時も、オステオパシーではその症状を緩和し、治癒力を高めて、より早い回復を促すことができます。

それは、下顎と頭蓋骨との関連性や、脳脊髄液と頭蓋仙骨の関連性といったもの、また捻挫に関しては “(5)代表的なスポーツ傷害とオステオパシーによる治療” にも概要を書きましたが、いずれにしても患部はもちろん、そこだけに捉われない、身体を一つのユニットとしてみる視点が、身体の持つ自己治癒力を向上させるアプローチに繋げることができるからです。

また、日々の練習などでの、特異的な姿勢や動作によって生じる、スポーツ障害に対しても、定期的なオステオパシーのケアで、「大難は小難に、小難は無難に」とすることができます。
さらに、“(7)スポーツパフォーマンス向上のためのオステオパシー” に書いたような効果も望めます。

これは、身体のシステムがきちんと作動することで、怪我のリスク、特にスポーツ障害のリスクを減らし、動作の効率を上げるからでしたね。
ここにトレーニングによる神経筋の改善と成長ができれば、より相乗効果が見込めます。このアプローチができるのも、スポーツ領域のオステオパスの強みでもあります。

今日の日本では、レントゲンやMRIで異常が無ければ、痛み止めの薬のみを処方されるということがまだあるようです。
そして痛み止めだけしか処方されないだろうからと、どこにも行かずにそのままにしてしまう、スポーツ愛好家やアスリートもいます。

スポーツ傷害を負ってしまい、なかなか良くならない方や、以前と比べて身体の動作が悪くなってしまったように感じる方、もしくはスポーツ領域のオステオパシーを学んでみたいという方は、一度ご相談されてはいかかでしょうか。

オステオパスも講師も、一同、皆様のお役に立てられるようお待ちしております。

染谷 清行, MRO(J). NASM-PES.BESJ-MPT

ジャパン カレッジ オブ オステオパシー 生理学講師
さいたまオステオパシー代表
フィジカルトレーナー