JCOを卒業後、東京で開業し、今年で10年目を迎える佐藤陽一郎先生。現在のオステオパスとしての生活やこれまでの歩み、異業種から転職して入学に至るきっかけなどを、懐かしい母校の教室で伺いました。

プロフィール

佐藤 陽一郎, MRO(J)

全身調整くにたちオステオパシー経営
1974年生まれ 山梨県出身
青山学院大学卒業
「スラムダンク」に影響を受け、大学時代はバスケットボール部に所属。
コックやバーテンダー、カフェの店長など様々な職を経験した後、オステオパスの道に。
JCO卒業後、全身調整くにたちオステオパシーを開業。現在に至るまで一人で院を経営する。
JCOでは2020年まで「ストラクチャル・テクニック」の講師として、後進の指導にもあたる。
妻と子どもの3人家族。
https://www.kunitachi-oste.com/

1. 天職と出会い、楽しく、充実した現在

ーー オステオパシー施術院を開業してから今年で10年目となりますが、オステオパスとして働く毎日は充実していますか?

すごく楽しいです。個人事業主は大変というイメージはありますが、全て自分のペースで働ける、そしてすべて自分で決められる、というのは私にとっては楽ですし、楽しいです。髪型や服装の規定もなく、経営も自由にできる。そういうところがすごく楽ですし、この仕事が合っていると思います。

嫌なことがあったり、波があっても、幸せに働くことができています。この仕事を選んでよかったと思っています。

ーー 施術院の仕事のある日の、標準的な一日の過ごし方を教えてください。

7時に起きて朝食を食べ、8:30頃には職場に着きます。掃除などの準備を済ませて9時から13時まで、仕事をします。13時から15時はお昼休憩で、ランチを食べたり、外出して買い物をしたりして過ごします。15時から19時までまた仕事をし、片付けをした後、20:30頃に帰宅します。就寝は24時頃ですが、読書や調べものをする時は25時頃になります。

休憩時間には読書や勉強をするようにしています。一日あたりだと、30分から1時間くらいでしょうか。最近は、症例を見直したりしています。他には、解剖学書をみたり、JCOで教わった内容の復習をしたり。内臓マニピュレーションの復習などをしています。経営の本を読み直したりもしますし、時には趣味の本を読んだりもします。このところ、成田悠輔さんの本をよく読みます。

びっくりしたのは、ある統計によると、ほとんどの社会人が本を読まない、ということです。本を読めばそれだけでも差別化になる。そういう意図もあります。

ーー 勉強家であり、努力家でもあるんですね。定休日は日曜日だけですが、お子さんともっと遊ぶ時間が欲しいと思うことなどはありませんか?

そのようなときは休んでいます。スケジュールは自分で決められるので。

朝食は家族で食べますし、夜には子どもと一緒にお風呂に入ることもまだあります。この夏は、日帰りでしたけれど、温泉に行ったり、川遊びや釣りをしたり、BBQをしたり、家族で楽しい時間を過ごすことができました。秋には家族旅行も計画しています。

仕事、家族と過ごす時間、自分の時間のバランスを取れるよう、自分でコンロトールできていると感じています。

ーー 仕事で大変だなと思うことはありますか?

一人で働いているので、どうしてもだらけやすい、という点はあると思います。人間はそういう生き物でしょうがないとは思いますが、そこは嫌だなと思うところです。むしろだらけるときは思い切ってだらけるなど、メリハリをつけるようにしています。それも自分でコントロールできるというのが、この仕事の楽しいところでもあります。お金よりも、フィジカル面、メンタル面の方が大事ですからね。お金のために無理して働いている人は多いですが、それはキツいです。それで病んでいる、というのもあると思います。

ーー オステオパスの仕事のどんなところが気に入っていますか?

たまたまですが、最近「なんで好きなんだろう?」と考えたことがありました。

すると、子どもの頃から、立体的なものを作るのが好きなんだ、ということに気づきました。施術にしても、コックにしても、バリスタにしても。別々のものを組み立てていって、何かの形にしていくのが好きなんだと思います。小さいころから、ブロックとかプラモデルとかをいっぱい作っていたのも、その影響なのだと思います。

人間の体もそうで、今壊れてしまっているもの、うまくはたらいていないものを、リペアすること、直すことが好きなんだと思いました。だから性に合っているんだと思います。

自分の好きな人たちが、自分の施術によって、喜んで笑顔になる。それが最高です。だからこの仕事が天職なんだと思っています。

2. 憧れの存在を追いかけてJCOへ

ーー 学校に入る前はどんな仕事をしていたのですか?

米軍の基地でバーテンダーをやっていました。それ以前はコックをしたり、カフェの店長をしたり。職歴はいっぱいあります。「楽しそう」、「面白そう」を基準に仕事を選んできました。オステオパスの仕事も「面白そう」で選びましたが、これまでで一番長く続いています。

ーー JCOに入学してオステオパシーを学び始めるきっかけは、どのようなものだったのですか?

私の妻の体調が悪く、平塚佳輝先生(現JCO学長、立川オステオパシー副院長(当時))の施術を受けていたのですが、それですっかり良くなりました。私も妻に勧められて一度受けてみたのですが、すると自分の体も羽が生えたように軽くなって感動してしまって。それで調べてみると、平塚先生がイギリスでオステオパシーを学び、JCOで学長として教えられていることを知り、オステオパシーを学ぶことに興味を持ちました。

調べてみて、「これ面白い!やりたい!」と思ったのがきっかけです。

そして「平塚先生のような治療家になりたい」と憧れを抱きました。少年がイチローに憧れてプロ野球選手を目指すのと同じですね。あのような施術家になりたい、と思いました。自分になれるかは分かりませんが、テクニックにまず憧れましたし、人格も素晴らしくて、本当に素敵な先生なんです。

だから私自身も、「この人みたいに楽しく仕事をしてるのいいかも」、と思ってもらえるとありがたいなと思っています。本当に楽しく仕事をしているのかな、と思ってしまうような暗い治療家も世の中にはいます。そんな中で、憧れられるような存在が一人でも増えるといいのかな、と。

私の院のクライアントが一人、JCOに入学したのですが、そういう意味では嬉しかったです。
そんな人が、一人でも二人でも増えてくれればいいな、と思っています。

また、なにか新しいことを始めるときには、たいていはその世界で先駆者がいるものです。それであれば、その人に学んだ方が、独学よりも圧倒的に早いと思いました。それでJCOを選び、入学しました。

3. 一流から学べる魅力

ーー JCOで学んでよかったところはどんなところですか?

源流を学んだ人たちから学べるのは大きい、と思います。今の世の中、コピーが氾濫しています。スティル先生から学んだ人たちの息吹が残っている。きちんと源流を学べる。それがJCOで学べる良さです。

講師は海外のオステオパシー大学を出ている先生も多く、在学中や卒後に参加できる日本オステオパシー学会のセミナーでも、スティル先生の正統な系統から学ばれた高名な先生方が来て、教えていただけます。名誉顧問のゲーリング先生のような、一流の先生に教えていただく機会もあります。学長の平塚佳輝先生は、イギリスの名門、BSO(British School of Osteopathyの略(現在はUniversity College of Osteopathy))の出身です。

なんでもそうだとは思うのですが、源流、一流から学べるのはとても大切です。そこに一番の魅力を感じています。

先程も言いましたが、独学では時間がかかります。そういう一流の人たちがいるコミュニティに入った方が、成長は速いです。一人だとやはりだらけてしまいますし、限界があります。まわりにそういうすごい人たちがいると、頑張らなきゃというモチベ―ションにもなります。

JCOでの学びや、そこで培った人たちとの交流は、いまも仕事に活きています。自分の尊敬する人たちがいると、仕事のモチベ―ションも高まります。一日中一人で働いているのですから、なおさらです。

ーー オステオパスとしてのこれまでのキャリアにおいて、壁となるような障害はありましたか?

壁というようなものはありませんでした。うまくいかないことがあれば、やり方を変え、別の方法を取って解決してきました。

しいて言えば、9年間の営業で1件だけ、クレームを受けたことがありました。その後いろいろな人の話を聞く中で今では意識も変わり、そのようなことがあっても受け流せるようになっていますが、あの時は精神的にきつい思いをしました。

4. これからを幸せに生きるために

ーー これからのことを伺いたいのですが、オステオパスとしての未来のゴールや今後のビジョンはありますか?

これからこうしていきたい、というのはありません。

人生の目的は、幸せに生きていきたい、幸せに働きたい、ということ。嫌なことはしたくありません。自分と家族が生活できるお金があり、自分の心身にストレスがかからなければ、それ以上は望みません。

施術院の経営においても、年商いくらのようなことは考えていません。むしろ数字の目標は立てないようにしています。数字は大事ですけど、数字だけに捉われないように気をつけています。

自分の好きな人たちに来院してもらい、その人たちに満足していただいて、自分が生活できる。今はそこを目指しています。クライアントに対して、満足してもらえているのかどうか、いつも自問自答しています。

5. オステオパスを志す人たちに伝えたいこと

ーー この記事を読んでいる人の中には、これからオステオパスを志す人もいると思いますが、その人達に向けて、伝えたいことはありますか?

まず楽しんで欲しいです。自分の選んだ道は正しいのだから、自信を持って欲しいですし、どうやったら楽しんで働けるか、ということを考えてもらえたらと思います。

学校にすぐ入れないという人は、単科生で一度学んでみて欲しいです。既に施術を仕事としている人であれば、自分に足りないものを学んでもらって、自分の施術に活かす、というのでもいいかな、と思います。

学校に入って学ぶのが一番ですけれど、それができないのであれば、できる範囲で本物を学んでもらって、自分の施術に活かせて、患者さんも自分も幸せになってもらえばいいかな、と思います。

オステオパシーの哲学に間違いはありません。オステオパシーが少しでもお役に立てれば幸せに思います。

6. さいごに(インタビュアーの感想)

自分自身の価値観が明確で、自分らしい生き方を貫いている佐藤陽一郎先生。オステオパスとして自分の望む人生を実現している姿は、これからオステオパスを志して異業種から転職してくる人達の、目標となっていくのかもしれませんね。

執筆者:佐藤 鉄也
JCO講師
広報・マーケティング担当